Instagramの年齢認証でも採用されたYoti社について調べてみた

イギリス発のスタートアップ企業「Yoti」について本記事では説明していきます。

Yoti社は2020年に設立された比較的新しい企業ですが、

  • イギリスの郵便局との提携
  • イギリスの大手銀行「ロイズ銀行」のデジタルウォレットアプリの開発
  • Instagramにおける年齢確認システムの運用

など大規模な取り組みを多数行っています。

彼らが提供するアプリは1400万ダウンロードを突破しているようで、民間事業者が提供するデジタルウォレットアプリとしては最大規模です。
彼らの強さや優位性がどこにあるのか、大変興味深いです。

Yotiのサービス

Yoti社のwebページを見ると、大きく六つのサービスを展開しているようです。
それぞれ見ていきましょう。

①本人確認サービス

これは一般的な本人確認事業のようです。

社会で通念上認められている身分証の画像や本人のセルフィー画像を受け取って、本人確認を行うスキームです。
身分証からテキストデータを抜いてくるOCR技術、ライブネス技術(本当に実在する人間かの確認)などを磨き、精度向上や自動化による確認時間の削減に取り組んでいるようです。

②顔年齢推定

顔画像データを受け取り、彼ら独自のアルゴリズムや機械学習・AIによって推定年齢を出すというサービスのようです。
「実年齢からプラスマイナス2歳以内の判定が可能」と謡っているようです。

このサービスの特徴は、身分証明書やクレジットカードなどのデータソースが不要という点です。自撮り写真だけで年齢を推定する体験を実現しています。

これはなかなか革新的です。
従来の基本的な方式は「身分証明書で公的な機関が認定する生年月日を取得」+「提示された身分証明書の保有者が提示しているか、別途自撮り写真等で確認」だったので、前者のプロセスを省略することが可能となります。

③年齢確認サービス

ユーザーが「年齢確認の制約を満たしているか」確認するサービスとなります。生年月日や年齢をそのままサービス側に共有するのではなく、「このユーザーは18歳以上である(25歳なのか50歳なのかは不明)」という形式で、よりプライバシーが守られた状態での年齢確認が可能となります。

②のサービスと被っているように見えますが、どうやらこの③の「年齢確認サービス」はより包括的なサービスのようで、この中に①の「本人確認サービス」や②の「顔年齢推定」も含まれているようです。

▼以下画像のように、サービス利用やコンテンツ視聴における基準年齢を満たしているか確認できます

④デジタルIDサービス

これはいわゆる「再利用可能なデジタルID」「ウォレット型の本人確認」と言われるサービスです。
①の「本人確認」で認められたデータをウォレットアプリに格納し、一定期間内はそのデータを提示するだけで本人確認が完了するというサービスです。

VC(Verifiable Credentials)やmDL/mdoc(公的証明書のデジタル化に使用される規格)といった規格を利用していると思われます。

⑤電子署名サービス

オンライン上で文書を作成したり契約書を締結する際などに、行為者を電子的に記録するサービスです。
クラウドサインやDocusignのように、契約書PDFをアップロードすると回付ルートを設定できるようです。

また行為者のアカウント開設時に、①の本人確認サービス等を組合わせることも可能なようです。

「一文書あたり0.4ポンドで利用できる」とファーストビューに載っており、このサービスのページだけBtoB業務効率化のSaaSのような見た目なのが印象に残ります。

⑥MyFace® AI Services

最後6つ目は、バチっとした和訳が見つからない見慣れないサービスでした。

どうやらライブネスサービスの一環で、ユーザーや提出画像が実在する人間なのか確認できるサービスのようです。
生成AIによるディープフェイクが発達し「つくりものの人間の画像による偽装リスク」が高まり続ける中で、元々彼らが強みをもっていた基盤を切り出して外部提供しているのではないかと推測しています。

▼イスラム教徒向けのマッチングアプリ等に導入されている模様

まとめ

以上です。なかなか多方面に展開していますね。

日本で言うと

  • TRUSTDOCK様やLiquid様のような本人確認サービス
  • xID様のような公的証明書の利用支援サービス
  • 当社Receptのようなデジタルウォレットアプリ

をかけ合わせたサービスでしょうか。

これらの機能を一社で提供することで、各事業者の求める強度や利用シーンに応じたサービスを提供できるのが一つ強みではないかと思います。
また②の画像解析AIを用いたソリューションなど、技術力に由来する優位性も持っているのが圧巻です。

日本でもマイナンバーカードやデジタル庁の認証アプリが出る中で、本人確認サービスの提供事業者は統廃合が進んでいくのではないかと予測しています。
その中で認証サービスをバインディングして、企業側のニーズにオールインワンで答える事業者が出てくる可能性は十分にあると思います。

当社は現在DID/VCの技術開発に絞って事業展開を行っていますが、必要に応じて画像解析型の本人確認や、公的証明書の取り扱い支援にも事業拡大していくことを考えていきます。


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