その強み、単なる標準仕様ではないですか

NFTソリューションを提供する会社から営業を受けた。
先方担当者がプロダクトを紹介してくれる──────────

弊社がご提供する〇〇 NFTサービスには次の5つの特徴があります。

①ユーザー自身がウォレットで管理できるため、デジタル資産として真に所有可能
②暗号資産不要、日本円で決済可能
③トークン保有者へのインセンティブ設計を適切に行い、トークノミクスの形成支援が可能
④一度発行されたデータは偽装不可能で真正性が担保
⑤NFTをチケットとして利用する機能付き

これらの特徴によって、弊社サービスならではの顧客コミュニケーションが可能となるのです。

さて、この説明に違和感を感じないだろうか。その原因の根本は記事タイトルの通り「その特徴、単なる標準仕様ではないですか」だ。

前述の例で言うと、各特徴は以下に分類される。

①、④:NFTの標準規格(例えばERC721)が備えている仕様
②、⑤:NFTの標準仕様外であり、サービスが独自に設けた機能
③  :その企業がもつノウハウや知見をベースとしたソフトスキル

当然②、③、⑤の観点で他サービスと比較することになっていくだろう。

他でもないそのサービスを使うべき理由はなんなのか

標準仕様に従うことに価値がない、という話ではない。

仕様が複雑、アップデートが早くて準拠し続けるのが難しい、サービス提供にあたり必要な許認可がある…などの理由で標準仕様準拠そのものがモート(溝)になることもある。相互運用性を考えると、標準に準拠していることがサービス採用の大前提となることもあるだろう。

ただし基本は標準仕様に従うと「誰でも同じものが完成する」ため、機能面での差別化に関しては周辺機能を開発し特許で囲う、もしくはコンサル売りをしてソフトスキルで差別化を図る、といった流れになるのが自然だろう。

示唆

Web3が出てきたばかりの頃には冒頭のような会話が飛び交っていたように見受けられる。
ベンチャーはもちろん、大手ベンダーであっても「標準仕様に基づく性質+自社が元来持っている強み・実績」を相載せしたような説明資料が出回っていた。

さすがに冒頭レベルの説明をする事業者はもう残っていないかもしれないが、それでも営業を受ける際は「貴社が真に有する強み(モート)はなんですか」と聞いてみるのがいいだろう。


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