ふるさと住民登録制度【実証フェーズの論点整理】

2025年に構想として整理された「ふるさと住民登録制度」は、
2026年に向けてモデル事業の実施が予定されるなど、実装を前提とした検討段階に入りつつあります。
本記事では、Receptメディアでこれまで解説してきた制度の背景を踏まえつつ、
最新の政府動向とモデル事業の位置づけを整理し、
自治体様および自治体関連会社様が今後検討すべき実務論点を整理します。
これは過去にまとめたふるさと住民登録制度の記事なので、まだ読んでいない方はこちらから読んでみてください。
ふるさと住民登録制度は、検討対象から実装判断の段階へ
ふるさと住民登録制度は、これまで「構想段階」にある制度として議論されてきました。
前回の記事執筆時点でも、制度の方向性や狙いは示されていたものの、
具体的な運用像や実務への落とし込みについては、検討途上の部分が多く残っていました。
しかし、2026年1月22日の報道では、
総務省が来夏にもモデル事業を実施する方針を固めたと伝えられています。
構想にとどまっていた制度が、国主導で実運用を検証するフェーズに入ろうとしていることを示す動きです。
参照元:https://www.travelvoice.jp/20260122-159120
モデル事業の位置づけと、国が検証しようとしている点
今回予定されているモデル事業は、制度の正式開始前に行われる実証フェーズです。
国が検証しようとしているのは、制度の理念そのものではありません。
登録手続きが現場で成立するか、自治体職員の事務負担が過度にならないか、
優遇施策の設計や運用が継続可能なものか、
そしてデジタル基盤が実務の中で使えるものかどうか。
モデル事業は、制度が正しいかを示す場ではなく、
制度が実装可能かどうかを確認するための場として位置づけられています。
ここで得られた知見は、今後のガイドラインや標準モデルに反映されることが想定されています。
総務省が想定しているモデル事業は、自治体を一律に扱うものではありません。
関係人口施策の取組状況などを踏まえ、複数の類型に分けて実証する方針が示されています。
また、モデル事業では、国が想定する登録アプリを用いた実証が行われる予定とされています。
登録手続きそのものだけでなく、登録後の情報提供や施策連携が、
自治体の現場で無理なく運用できるかどうかが検証対象になります。
こうした実証を通じて得られた知見は、
今後のガイドラインや標準モデルに反映されることが想定されています。
モデル事業は、制度を評価する場というよりも、
制度設計を現実に合わせて調整していくためのプロセスとして位置づけられています。
国が想定しているモデル事業の類型と狙い
総務省が想定しているモデル事業は、すべての自治体を同じ条件で検証するものではありません。
関係人口施策の取組状況や自治体規模の違いを踏まえ、複数のタイプに分けて実証を行う方針が示されています。
これは、制度の完成形を前提に評価するためではなく、
異なる条件下でも制度が成立するのか、どこに実務上の課題が生じるのかを把握するための設計です。
総務省資料によると
現在示されている主な類型は、次の三つです。
先行型:関係人口施策をすでに展開している自治体
- これまでに関係人口施策や独自の住民制度を実施してきた自治体を想定
- 既存施策とふるさと住民登録制度をどう整理・統合できるかが検証の焦点
- 登録区分や優遇施策を、比較的積極的に設計できる自治体が対象になりやすい
先行型では、制度をゼロから立ち上げるのではなく、
すでにある施策や運用をどこまで制度に接続できるかが検証されます。
後発型:関係人口施策の取組が限定的な自治体
- これまで関係人口施策に十分取り組めていなかった自治体を想定
- 制度導入時の初期負担や、職員体制への影響が検証の中心
- 小規模自治体や人的リソースに制約のある自治体が想定されている
後発型は、制度が「理想的な自治体」でしか成立しないものではないかを確かめる役割を担います。
広域型:都道府県と市町村が連携するケース
- 都道府県がハブとなり、複数の市町村が連携して制度を運用する形
- 登録情報の共有や役割分担が実務的に成立するかが検証対象
- 単独自治体では難しい施策を、広域でどう設計できるかが焦点
広域型では、自治体間連携を前提とした運用がどこまで可能かが試されます。
参照元:https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digital_gyozaikaikaku/kyotsu13/furusato_shiryou.pdf
類型分けが示していること
この類型分けが示しているのは、
「どの自治体が優れているか」を評価するためのモデル事業ではない、という点です。
制度を全国に展開する前に、
条件の異なる自治体でどのような課題が生じるのかを可視化し
現実的なガイドラインを作ることが主な目的とされています。
住民票ではない制度をどこまで行政サービスに接続するか
ふるさと住民登録制度は、住民基本台帳とは異なる制度です。
登録したからといって、法的な意味での住民になるわけではありません。
一方で、モデル事業では、公共施設利用や交通、地域イベントなど、
一部の行政サービスや地域施策との接続が検討されています。
ここで重要なのは、既存の行政サービスすべてを接続しようとしないことです。
住民票制度と競合させるのではなく、
住民票制度で拾いきれない関係性を補完する制度として
どこまで接続するのが現実的なのかが問われています。
自治体にとっては、制度の性質を踏まえたうえで
接続すべきサービスとそうでないサービスを切り分ける視点が不可欠になります。
登録区分(ベーシック/プレミアム)が示す制度設計上の意味
現在検討されている制度案では、
登録者を一律に扱うのではなく、関与の深さに応じた区分を設ける方向が示されています。

これは、関係人口を単に数として把握するのではなく、
どのように関わっているのかを評価しようとする制度設計であると読み取れます。
先行事例に見る「ふるさと住民」的制度の実装パターン
| 自治体・事例 | 制度の形態 | 主な特徴 | 国制度との関係・示唆 |
|---|---|---|---|
| 飯綱町 | 有料登録モデル | 年会費制の登録区分を設け、地域内施設利用券や特典を提供。地域ファンコミュニティとしての性格が強い | 登録区分(ライト/深化)の設計や、便益設計の考え方が国制度のプレミアム層と親和的 |
| 能登町 | 制度検討・整理段階 | 関係人口の関与類型(購入・参加・副業・居住など)を整理した資料を公開 | 実装前に「関係の深さ」をどう制度化するかという設計論の先行例 |
| ニセコ町 | ふるさと住民票® | 登録証の発行や情報提供、イベント参加などを通じた関係人口の可視化 | 国制度以前から、関係人口を「登録」という形で扱ってきた先行例 |
飯綱町のように有料で特典を設け、関係性を深めていくモデルは、
国制度で想定されている「プレミアム登録」の考え方を先取りした例と捉えられます。
一方、各地で導入されてきた「ふるさと住民票®」型の取り組みは、
広く関係人口との接点をつくるベーシック層の設計と重なります。
これらの先行事例が示しているのは、
国の制度を待つ前から、登録区分や便益の設計が現場で試行されてきたという事実です。
登録者の数を広げるのか、関与の深さを重視するのかによって、
制度の性格は大きく変わります。
既存の関係人口施策や独自制度との整理
国のふるさと住民登録制度が始まった場合、
自治体には、既存施策との関係をどう整理するかという判断が求められます。
すべてを置き換えるのか、部分的に統合するのか、あるいは併存させるのか。
この選択次第で、制度の分かりやすさや使われ方は大きく変わります。
制度設計そのものだけでなく、住民や関係人口にどう説明するかまで含めて整理しなければ
制度は現場で使われにくいものになりかねません。
自治体と関連会社が「今」準備すべきこと
現時点で優先すべきなのは、システム選定やツール導入ではありません。
まず必要なのは、ふるさと住民登録制度をどのように運用するのかを整理し
自分たちの自治体にとって、どのような制度にしたいのかを言語化することです。
今回のモデル事業では、自治体の状況に応じて複数の類型が想定されています。
既存施策を持つ自治体、これから取り組む自治体、広域連携を前提とする自治体では、
検討すべき論点も異なります。
モデル事業への関与は、制度を受け身で待つかどうかを判断する場ではなく
自分たちの自治体がどの立ち位置で制度と向き合うのかを確認する機会でもあります。
この視点を持てるかどうかが、今後の制度運用に大きく影響します。
実際、検討を進める中では、登録情報の扱い方や自治体間連携の考え方
説明責任をどのように設計するかといった点が、実務上の論点として浮かび上がってきます。
終わりに
Receptでは、こうしたふるさと住民登録制度を巡る検討に対して
制度設計とデジタル基盤の両面から整理する支援を行っています。
制度の背景や前提を踏まえながら、
自治体ごとの事情に応じて運用や判断の整理を行うことを重視しています。
詳細・お問い合わせについては、以下のサービスページをご覧ください。


