W3Cがサプライチェーン向けVC活用の検討へ

ニュース原文:https://idtechwire.com/w3c-launches-community-group-to-apply-verifiable-credentials-to-supply-chains/?utm_source=

世界標準化団体 World Wide Web Consortium(W3C) が、サプライチェーン分野でVerifiable Credentials(VC)を活用するためのコミュニティグループを立ち上げました。対象は、原産地情報や加工履歴、規制遵守情報など、複数企業・複数国にまたがって流通する証明データです。

狙いは、各工程で発行される証明を検証可能な形で扱うための共通整理です。

サプライチェーンにおける課題

サプライチェーンでは、原材料の出所や工程履歴を複数の主体が共有します。従来は個別連携や中央管理型の仕組みに依存するケースが多く、真正性の確認や監査に手間がかかります。

VCは、発行者が署名した証明をそのまま検証できる形式です。これにより、各工程で発行された情報を、受領者や監査者が独立して確認できます。

図:VCを用いたサプライチェーン検証の基本構造

コミュニティグループの狙い

新たに立ち上がった Verifiable Supply Chain Community Group は、VCの応用において次のような制度・業務面の検討を進めることを目的としています

1. 業界別プロファイルとデータスキーマの策定
医薬品、自動車、食品・飲料、クリティカルマテリアルなど、業界ごとの規制やビジネス要件を踏まえたVCプロファイルやデータスキーマを整備します。

2. 相互運用性と準拠ガイドライン
既存の物流データ標準(例:EPCISやISO規格)や規制要件とVCとの間で、データ互換性・検証プロセスのガイドラインを策定します。

3. 信頼フレームワークと認証基準の検討
発行者・検証者の信頼基盤や、認証・準拠基準の運用モデルを設計します。これは、サプライヤーや規制当局がどの程度の信頼保証を求められるかという制度的要件にも関わります

4. 実装ガイドおよびインターオペラビリティツール
実例やツール群を通じて、企業がVCを業務プロセスに組み込む際の具体的な手順やソリューション設計を示すことを目指します。

これらは単なる技術仕様ではなく、業界ごとの運用要件・準拠プロセス・検証責任の担保といった制度設計の補完に直結します。

VC適用で何が変わるのか

VCを採用すれば、すべての課題が解決するわけではありません。ただし、証明の真正性確認を個別の信頼関係に依存せずに行えるようになります。

その結果、

  • 監査時の確認プロセスを簡素化できる
  • 規制当局への提示を標準化できる
  • 取引先間での証明の再利用が可能になる

といった実務上の変化が見込まれます。

問われているのは標準の方向性

今回の動きの焦点は、VCを技術として使えるようにすることではありません。
サプライチェーンに適用する際、どの情報を証明対象とし、誰が発行主体となり、どの保証水準を求めるのかを共通の枠組みとして定めることにあります。

標準の方向性が定まれば、企業のシステム設計や規制対応の前提も揃います。逆に言えば、それが固まらない限り、各社は個別設計を続けることになります。

W3Cのコミュニティグループ設立は、サプライチェーンにおける証明データの扱いを整理するための第一歩です。企業にとって重要なのは、VCを採用するかどうかではなく、どの標準枠組みに基づいて設計するかという判断です。


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