DID/VCはWeb3なのか?

はじめに

面談した方から「貴社はWeb3系スタートアップですか?」「どこのチェーン使ってますか?」と聞かれることがあり、本記事を書くことにしました。

説明のながれ

Web3は複数の技術、考え方によって構成される包括的な概念だと捉えています。
よって、本記事でも以下の観点から「DID/VCはWeb3なのか」についてそれぞれ私見を述べていきます。

  1. ブロックチェーンの観点
  2. トークンの観点
  3. イデオロギーの観点
  4. プレイヤーの観点

なお、それぞれの観点は完全に独立しているわけではないですが、細かいところは置いといて簡潔さ重視で説明します。(Web3やDID/VCに詳しい方ほど違和感が大きいかも、、?)

ブロックチェーンの観点

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結論:どちらとも言えない

ブロックチェーンはデータを分散的に保持・記録するための技術です。ビットコインの構成技術として登場しました。

Web3の世界では、ブロックチェーンは必ずと言っていいほど使われます。(ブロックチェーン上のトークンを活用したサービス、データをブロックチェーン上に保管するサービスなど使い道は様々)

DID/VCでは、ブロックチェーンの利用はマストではありません。
ただし、VC(デジタル証明書)にまつわる公開鍵や発行者情報を記録するレジストリとしてブロックチェーンは非常に相性がよく、使われているケースも多いです。

ちなみに、現在当社はブロックチェーンを利用していません。
これは「現状、ブロックチェーンを使っているか否かはプロダクトの採用動機に繋がらない」と考えているためです。

DID/VCでブロックチェーンを使うメリットとして

  • データを第三者が恣意的に改竄することが難しくなる
  • 発行基盤システムのサービス終了や発行者の消滅などでVCが無価値になるリスクが減らせる

といった点が挙げられます。

イデオロギーの章で後述しますが、DID/VCも分散志向の技術ではあるので信用点を減らすことは価値ある取り組みです。
当社も今後ブロックチェーンが必要となるユースケースが出てくると想定しており、ブロックチェーンシステムの開発に強みを持つ事業者との業務提携を行なっています。

トークンの観点

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結論:Web3ではない

トークンもボヤッとした用語ですが、「所有者がなんらかの権利を有していることを証明するもの」と捉えるのが過不足ない定義だと思っています。

Web3では、暗号資産・セキュリティトークン・NFTなどのトークンが登場し、それぞれ標榜する権利の種類や性質が異なります。
トークンはブロックチェーン上にデータが記録され、対応する秘密鍵を保有するユーザーが操作を指図することができます。

DID/VCでは、VCのデータはユーザーのデバイスに格納されます。
VCの正当性を検証するために必要な情報(DID Documentと呼ばれます)は外部のストレージに記録する必要があり、それらのデータが前述の通りブロックチェーンに記録されることがあります。

DID/VCはデータの実態がブロックチェーン上にはない(トークンではない)ため、この観点では明確にWeb3ではないと整理できます。

イデオロギーの観点

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結論:Web3である

Web3には、これまでのデジタル世界の問題や不条理を根本から解決するというイデオロギーが根強く流れています。

代表的なものでいうと

  • 国家が通貨を介して恣意的に経済をコントロールできる
  • GAFAをはじめとするビックテックが大量の個人情報を抱え、そこから収益を上げている
  • 本来自由であるはずのインターネット空間が閉鎖的なものになっている

などがあります。

抽象化すると、「中央集権的な組織や企業が大きな力をもつ世界を変えたい」という話です。

※私自身、これらの壮大な課題に挑戦するWeb3の考え方に大きな可能性を感じ、Web3について調べ始めた過去があります。
この辺はnoteにちょこちょこ書いています。
https://note.com/recept_oshima/m/m824edb45776e

DID/VCも、これらのイデオロギーと近しいものが背後にあり促進されていると感じます。

例えば

  • ユーザー自身でデータの実態を管理すること
  • データを発行する事業者がユーザーのデータ開示を追跡できないこと
  • ブロックチェーンなどの分散ストレージ上に関連データを置くこと

といったことが重視されているのは、「中央集権的な世界を分散化させる」考え方が反映されていると思います。

プレイヤーの観点

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結論:Web3ではない

おまけ的な項目ですが、業界に関わる方々の性質も異なっています。

Web3の世界をつくってきた代表的な組織は

  • サトシ・ナカモト
  • イーサリアムファウンデーション

などの、ビットコインの登場と共に出現し発展した自然発生的な組織が多いです。

一方でDID/VCは

  • W3C
  • ISO
  • OpenID Foundation

といった、古くから存在する標準化団体が仕様等を決めています。

個人レベルでも、Web3の方が「新しいもの、怪しいものが好きなあらゆる人々がいる」界隈だと思います。
誤弊をおそれずもっと言うと、Web3の方が「非エンジニアでも頑張れそうな領域」だと思います。
実際、Web3界隈には(私を含め)非エンジニアの方が一定数いらっしゃいますし、暗号資産やNFTの発行・販売、DAO組成もGUIでぽちぽちすれば可能な世界となりました。

一方でDID/VCは、専門家やエンジニアの方々が多くを占めているイメージです。
(まだ日本では黎明期の領域なので、今後市場が大きくなれば様々な方が入ってくる可能性はあります。GUIベースのシステムは当社も開発していますし。)

いずれにしても、Web3は「カオスな領域」であり、DID/VCは「学術的でディープな領域」だと感じます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
ウォレットなど他にも観点はありますが、今回はよく聞かれる4項目についてまとめました。

前職でWeb3領域を担当していたこともあり、DID/VCとWeb3の相違点を自分なりに整理してアウトプットしてみました。
(念の為補足すると、私は今でもWeb3に大きな可能性を感じていますし、そこに携わられている方々のことも尊敬しています。)

当社はDID/VCの領域で事業者向け技術基盤、ユーザー向けウォレットアプリの開発を行っております。
DID/VCを活用した事業を検討される際には、ぜひお気軽にご連絡ください。