八王子市と中央大学が進めるオープンバッジを活用した職員育成の取り組み
ニュース原文:https://hachioji.keizai.biz/photoflash/5007/
八王子市と中央大学は、職員の学習支援・人材育成を目的とした連携を進めています。
この取り組みでは、市職員が大学の教育リソースを活用して学び、その学習成果をオープンバッジという形で可視化する仕組みが検討・導入されています。
両者は以前から包括連携協定を結んでおり、今回の動きは、その枠組みを「職員の学びの記録・評価」という実務領域に具体化したものと位置づけられます。
オープンバッジとは
オープンバッジは、学習や研修の修了、特定スキルの習得といった成果を、デジタル証明として発行・共有できる仕組みです。
発行主体(大学や研修機関など)が、
どのプログラムを、どの条件で、誰が修了したのか
といった情報をメタデータとして付与します。
紙の修了証やPDFと異なり、第三者がオンラインで内容を確認できる点が特徴で、
近年は大学教育だけでなく、社会人教育や公的機関の研修でも活用が広がっています。
オープンバッジとDID/VCの関係性
技術的な観点では、オープンバッジは
Verifiable Credentials(VC)と考え方が近い仕組みです。
共通しているのは、
- 発行主体が明確であること
- 内容の真正性を第三者が確認できること
- 証明を本人が保持・提示できること
といった点です。
近年の議論では、オープンバッジをVCデータモデルと親和性の高い形で扱う動きも見られ
学習履歴を「持ち運べるデジタル証明」として扱う可能性が意識されるようになっています。
この動きが示す実務的な意味
Receptでは、DID/VCを概念や規格の説明にとどめず、実際の業務や制度にどう組み込めるかという観点で支援を行ってきました。
その立場から見ると、今回の八王子市と中央大学の取り組みは、学んだ事実をどう残すかではなく学習成果を、第三者が確認できる形でどう扱うかに踏み込んでいる点が特徴的です。
八王子市と中央大学の取り組みを「オープンバッジ導入」という技術面だけで見ると、やや分かりにくく感じるかもしれません。
しかし実務の視点で整理をしていくと、この動きは公務員の人材育成が抱える構造的な課題に正面から向き合ったものなのです。
公務員の人材育成には、民間企業とは異なる特徴があります。
まず、異動が非常に多いこと。
職員は数年単位で部署を移り、専門分野や業務内容が変わります。そのため、職員が何を学び、どの分野に強みを持っているのかが、異動のたびに見えにくくなりがちです。
次に、キャリアが長期にわたること。
数十年に及ぶキャリアの中で受講した研修や学習内容は蓄積されていきますが、紙や内部システムに分散して管理されると、後から全体像を把握するのは大変困難です。
さらに、組織横断でスキルを把握する必要があるという点も重要です。
行政DXや新しい政策課題に対応する際、どの部署に、どんな知識やスキルを持った職員がいるのかを把握できなければ、適材適所の配置やチーム編成はできません。
八王子市がオープンバッジを導入した背景には、
学習履歴を蓄積すること以上に、「研修で得た知識やスキルを、異動後も含めて業務や人材配置に反映できる形で管理したい」という実務上の課題があった為でしょう。
オープンバッジは、学習成果を個人単位で整理し、デジタルで持ち運べる仕組みです。
これにより、
- 異動しても、これまでの学習履歴を本人が提示できる
- 管理職や人事部門が、職員の強みを把握しやすくなる
- 大学など第三者が関与することで、学習内容の信頼性を担保できる
といった運用が可能になります。
今回の取り組みの本質は、
学んだ事実を「残す」ことではなく、学習成果を「第三者が確認できる形」で扱い、
人材配置や育成に実際に使える状態にしようとしている点にあります。
これは、行政DXや人材戦略を考える上で、非常に現実的な一歩だと言えるでしょう。
まとめ
今回の八王子市と中央大学の取り組みは、単に研修制度を新しくした、という話ではありません。
研修を受けた職員が、
- どんな知識やスキルを身につけたのか
- それを異動後や別部署でもどう活かせるのか
- 組織として、その人材をどう活用できるのか
といった 「学習のその先」までを見据えた仕組みづくりが、行政分野でも具体的に検討され始めていることを示しています。
今後、オープンバッジやDID/VCの技術や考え方が人材育成や証明のあり方をどのように変えていくのか。
注目されるポイントと言えるでしょう。
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