日本銀行がVCのレビューを公表
ニュース原文:https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2026/rev26j02.htm
日本銀行は2026年3月13日、日銀レビュー
「デジタル社会におけるアイデンティティ証明を支えるVerifiable Credentialsの概要と規格開発の動向」
を公表しました。レビューでは、Verifiable Credentials(VC)の基本構造、活用事例、規格開発の動向が整理されています。
日銀はVCをどう説明しているのか
日銀レビューでは、VCをデジタル署名によって真正性の確保や改ざん防止を実現できる、汎用的かつ機械可読なデジタル証明書として説明しています。属性情報に加え、発行者などのメタデータと電子署名を組み合わせる構造が示されており、データ形式としてはSD-JWTやmdocなどにも言及しています。
ここで重要なのは、VCが単なるデジタル化された証明書ではなく、その場で真正性を検証できる証明形式として位置づけられている点です。レビュー冒頭でも、デジタル化の進展に伴い、なりすましや改ざんへの対応とあわせて、提示された証明書を迅速に検証できる仕組みが求められていると書かれています。
どのような使い方を想定しているのか
レビューでは、大学が卒業証明書VCを発行し、転職希望者がそれを企業に提示する例を使って、VCの基本モデルを説明しています。
大学が発行者、転職希望者が保有者、転職先企業が検証者となり、企業は公開鍵を用いてVCの真正性を確認します。日銀はこれをIHVモデル(Issuer / Holder / Verifier)として整理しています。

この仕組みによって、発行者・保有者・検証者それぞれの負担を軽くしながら、証明書の真正性を迅速に確認できるとしています。
日銀が挙げたVCの特徴
レビューでは、VCの特徴として多様な属性情報を扱えること、選択的開示によってプライバシー保護を図れること、中央集権的なデータベースを必須としないことが挙げられています。保有者が提示し、検証者が署名を確認することで証明が成り立つため、情報管理の構造も比較的分権的に設計できます。
この整理からは、日銀がVCを単なる証明書フォーマットではなく、デジタル社会におけるアイデンティティ証明の基盤技術として見ていることがうかがえます。
活用事例と規格開発の動向
レビューでは、VCの活用事例として新型コロナワクチンの接種証明書や米国のモバイル運転免許証が紹介されています。加えて、各国政府、業界団体、民間企業で利活用の検討が進んでいるとも整理しています。
規格開発の動向としては、ISOが2024年10月にvLEI(verifiable Legal Entity Identifier)の国際規格を発行したことにも触れています。VCが概念整理にとどまらず、標準化と実務の段階に進みつつあることを示す材料です。
vLEI(verifiable Legal Entity Identifier)とは
vLEIは、法人を識別する国際コードである LEI(Legal Entity Identifier) を基盤にした、法人向けの検証可能なデジタル証明です。法人そのものの実在を示すだけでなく、その法人を代表して行動する個人の役割や権限まで、検証可能な形で扱えるよう設計されています。

もともとのLEIは、企業や団体などの法人を一意に識別するための20桁のコードです。vLEIは、そのLEIに基づく信頼を、デジタルの取引や業務プロセスの中で使いやすい形に広げたものといえます。
日銀レビューでvLEIが取り上げられているのは、VCが個人の属性証明にとどまらず、法人や、その法人を代表する個人の権限確認にも広がっていることを示すためです。特に金融や国際取引の場面では、「その会社は実在するのか」だけでなく、「その担当者はその会社を代表して行為してよいのか」を確認する必要があり、vLEIは、その確認を検証可能な形で行うための仕組みなのです。
今回のレビューをどう考えるか
今回の日銀レビューは、VCを個別の活用例だけで捉えるのではなく、アイデンティティや属性を証明・検証する仕組みとして全体的に整理しています。金融実務への応用可能性に触れながら、技術の基本構造、プライバシー面の特徴、規格開発の流れまでを一つの文書で確認できます。
vLEIのように規格化が進む領域も出てきており、議論は概念整理から実装と制度設計へ移りつつあります。今後は、どの領域で、どの証明を、どの規格に基づいて扱うのかが、より具体的な論点になっていきそうです。
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