FIDO Alliance、アジア太平洋地域初の「Authenticate Conference」をシンガポールで開催へ
──パスワードレス認証とデジタルIDの国際連携が新段階へ
FIDO Alliance(ファイド・アライアンス)は2025年12月1日、デジタルアイデンティティと認証技術に特化した世界最大級のカンファレンス「Authenticate Conference」を、アジア太平洋地域(APAC)で初めて開催すると発表しました。
イベントは2026年6月2日〜3日にかけて、シンガポールのグランドハイアットで行われる予定です。
FIDO Allianceとは、パスワードに依存しない安全な認証技術の国際標準を策定する非営利団体で、Google、Apple、Microsoft、Samsungなど世界の主要テック企業が加盟しており、現在同団体が推進する「パスキー(Passkeys)」は、パスワードに代わる次世代認証方式として急速に普及が進んでいます。
今回開催される「Authenticate APAC 2026」は、このパスワードレス認証の未来を形作る重要なマイルストーンとなるでしょう。
なぜ今、アジア太平洋地域なのか
今回のAPAC初開催は、過去2年間にわたり実施されてきた「FIDO APAC Summit」の成功を背景に決定されたものです。こうした成功の背景には、アジア太平洋地域におけるデジタルアイデンティティと認証技術の急速な社会実装があります。
各国政府は、行政のデジタル化や越境取引の拡大を見据え、国家レベルのデジタルID構想を加速させており、さらに商業分野では、EC、金融、医療、教育といった分野で、パスキーを活用したパスワードレスログインの導入が急速に拡大しています。
日本でも、マイナンバーカードを中核としたデジタルID基盤の整備が進められており、これを起点に、Verifiable Credentials( VC )の社会実装に向けた実証も動き始めています。
こうした各国の制度整備と市場への技術導入が同時進行する中で、APAC地域は単なる“新興市場”ではなく、認証・デジタルID技術が最初に大規模実装され、その運用実態が事実上のグローバル標準に影響を与える地域へと変化しつつあります。この動きが、今回の開催地選定の背景にあると考えられます。
パスワードからパスキーへ
Authenticate APACは、パスワードレス認証の普及を目的とした技術カンファレンスですが同時に、将来的なデジタルアイデンティティ活用の方向性を議論する場としても注目されています。現在の主軸は「パスワードからパスキーへの移行」ですが、その先には、VCを活用した本人確認や証明のデジタル化が視野に入っていると見られます。
パスキーは、生体認証やデバイス認証を活用することで、
・フィッシング耐性が高い
・パスワードの漏えいリスクがない
・ユーザー体験が大きく向上する
といった特長を持つ認証方式であり、すでにGoogle、Apple、Microsoftなどが対応を進め、実サービスへの導入も拡大しています。
こうしたパスキー認証を基盤とすることで、将来的には、学歴証明、資格証明、本人確認情報などを「VC」として安全に発行・提示・検証する仕組みの実用化につながる可能性も指摘されています。とりわけ、行政手続き、金融、教育、医療といった分野において、本人確認の在り方が大きく変わる可能性があります。
また、カンファレンス終了後の2026年6月4日〜5日には、FIDO Alliance会員向けの総会(Member Plenary)が予定されており、ここでは、
・認証技術の技術仕様の方向性
・各国制度との整合性
・今後数年の標準化ロードマップ
などについて、より踏み込んだ議論が行われる見通しだ。ここでの議論が、パスキーの次の進化や、デジタルアイデンティティの国際的な活用にどのようにつながっていくのかも注目点です。
アジアが「認証の主戦場」になる時代へ
現在、世界的にフィッシング耐性を持つ認証技術への需要は爆発的に高まっています。
データ漏えい、なりすまし、ランサムウェア被害が深刻化する中、「パスワードという“人間の弱さに依存した認証”を、構造的に終わらせる」ことが求められているためです。
その最前線の一つが、人口規模、スマートフォン普及率、デジタル決済比率のすべてが高いアジア太平洋地域である、と捉えることもできます。
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