「ふるさと納税による市税の流出について、考えてみませんか?」

https://www.city.urayasu.lg.jp/todokede/zeikin/1034408/1037848.html

「ふるさと納税による市税の流出について、考えてみませんか?」

そんな記事が浦安市の公式ホームページに掲載されていました。
本日はこのような訴えが掲載されるに至った背景を解説します。

前提知識:ふるさと納税と市税の関係

皆さんご存じふるさと納税。

ふるさと納税の概要

ふるさと納税制度は、生まれ育った「ふるさと」や、自分を育んでくれた「ふるさと」に税を通して貢献する制度として、平成20年5月に始まったものです。

「ふるさと」となる自治体に寄附した金額の一部が、法律の範囲内で所得税や住民税から控除されます。

寄付や税控除が絡み少しややこしいですが、要は「本来自分が居住している地域に納めるべき税金を他の地域に納められる(その分返礼品がもらえる)」制度です。

当然、税収が増える自治体・減る自治体が出てきます。
浦安市は後者にあたるようで、直近の年度では約13億8千万円もの減少分が発生したようです。

https://www.city.urayasu.lg.jp/todokede/zeikin/1034408/1037848.html

さらに「ワンストップ特例制度」と呼ばれるスキームにおいて「本来は国に納められる所得税から控除される金額が、市や県に納められる住民税から控除されるようになる」状況が発生しているようです。

https://www.city.urayasu.lg.jp/todokede/zeikin/1034408/1037848.html

市税が減少した際の補填について

このように税収が減少してしまった地域に向けた補填の制度も存在します。

もともと国から自治体に配分されるお金として「地方交付税」があります。これは全ての自治体で一定水準の行政サービスが提供できるよう、税収が少ない自治体に国が配分するお金です。

ふるさと納税によって減少した税収のうち75%は地方交付税に上乗せされる形で配布されます。要は「地方交付税を介して、ふるさと納税による税収減少分のうち75%は補填される」仕組みなのです。

ところが浦安市は地方交付税の対象となる「税収が少ない自治体」ではありません。そのためふるさと納税による税収減が純減となってしまったのです。

浦安市の想い

浦安市公式ホームページの中では、上記のような状況が発生しているという事実伝達以上のことは書いてありません。
ただしタイトルが示すように何かを訴えかけているのは明らかです。

ふるさと納税は「官製のECサイト」と揶揄されることがあるように、地域を応援するという本来の趣旨が経済的インセンティブにかき消されてしまっている感は正直あります。

ふるさと納税「官製通販」化への責任と無念 草分けサイトが語る現実:朝日新聞

 地方自治体に寄付する見返りに、特産の肉やカニなどのお礼の品がもらえる「ふるさと納税」。いまや年間の寄付額は1兆円を超え、1千万人超が使う制度に成長したが、返礼…

寄付者の心理は「官製通販」 - 日本経済新聞

返礼品ではなく地域の応援を重視した寄付もある。代表例が災害支援だ。能登半島地震では寄付仲介サイト大手4社が返礼品なしの被災地への寄付を受け付け、3カ月弱で過去最…

改めて、「地方創生」というミッションはとんでもなく高い壁だと感じます。(この記事を書いているCOOの大島も秋田出身なので現状は身に染みています。)

合理的な思考プロセスをふむと「達成が限りなく難しいミッションであれば他のミッションに資源を回すべき(民間企業が美辞麗句を並べてこの領域に入っていくのは資本主義社会においては間違っている可能性が高い)」という結論に達してしまいます。

しかし、もちろんそんな理屈で問題解決を諦めるほど社会は冷たくなく試行錯誤を繰り返すしかない側面もあります。本事例はふるさと納税における悪い側面が出てしまいましたが、失敗も含めてトライアンドエラーだとは思います。(税収が増えて喜んでいる自治体もいるわけで)

微力ながら弊社も地方創生にテクノロジーの力で関与させていただき、限りなく高い壁に立ち向かう社会の一員になれれば幸いです。


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