責任あるAIの未来を示す─Youverse Demo Day
Responsible AI Forum 2025
Champalimaud Foundation(ポルトガル・リスボン)
ポルトガル・リスボンの Champalimaud Foundation で開催された「Responsible AI Forum 2025」(Center for Responsible AI 主催)にて、生体認証スタートアップ Youverse が最新デモを披露し、大きな注目を集めました。
本フォーラムは、AIの透明性・プライバシー保護・安全性・ガバナンスをめぐる国際議論のハブとして、政府関係者・テック企業・研究者・AIスタートアップが集う場となっています。
Responsible AI Forum で議論された“主要課題”
今回のフォーラムで繰り返し議題となったのは、以下の5つの本質的課題です。
① データ最小化:個人データの集中管理はリスクを拡大させる
巨大プラットフォームへの過度な依存、中央集権的データ管理への批判が強い。
② AIモデルのブラックボックス化
本人確認や信用判断など、重要なプロセスに“説明不能なAI”が使われることへの懸念が示された。
③ ディープフェイク・不正利用の急増
遠隔手続きの普及により、なりすまし・画像/動画の改ざんリスクが顕著に。
④ 相互運用性の欠如
国・企業・プラットフォームごとに本人確認スキームがバラバラで、ユーザー体験が断絶している。
⑤ ユーザー主権とプライバシー保護の両立
利便性を損なわず、ユーザーが自分のデータをコントロールできるモデルが必要。
ポルトガルの Bernardo Correia デジタル化担当国務長官、Google DeepMind の Fernando Pereira 氏、Feedzai の Pedro Bizarro 氏らが登壇し、
“AIの便利さと社会的責任の両立” に向けた課題が整理されました。
Youverse が示したアプローチ:分散型ID × VC × AI生体認証
Youverse のデモは、これらの課題に対して “実装レベルの答え” を提示した形となっています。
今回披露されたのは、リモートホテルチェックインソリューション。
このソリューションでは、以下の3つの技術が連動しています。
① AIによる生体認証(顔認証+Liveness判定)
AIモデルで顔特徴量を分析
瞬き・表情変化などから“本物かどうか”を検証
ディープフェイク画像・動画を排除する仕組み
→ 課題③(ディープフェイク対策)への具体的解決策
② Verifiable Credentials(VC)による改ざん不可の属性証明
パスポート/IDから抽出した情報をVC化
ホテル側は“改ざん不可のデジタル証明”として検証
チェーン上で第三者検証可能
→ 課題②(ブラックボックス化)を解消
→ 課題④(相互運用性)にも寄与
③ 分散型ID(DID)によるユーザー主権のデータ管理
個人データは中央サーバーに送らず、ユーザーが保持
必要時にのみ簡潔な証明のみ提示
Apple/Google のような特定OSに依存しない
→ 課題①(データ最小化)
→ 課題⑤(ユーザー主権/プライバシー)
ホテルチェックインにおける実際の価値
Youverseのソリューションは、従来プロセスと比較してチェックイン所要時間を20%削減しつつ、セキュリティ・UX・プライバシーのすべてを同時に改善しています。
さらに重要なのは、ホテルチェックインという“実業務フロー”の中で
- AI生体認証
- 暗号学的証明(VC)
- 分散型データ管理(DID)
がシームレスに統合されたこと。
これは、Responsible AIの議論で提示された課題を、
“理想論ではなく、具体的製品としてどう実装できるか”を示す実例となりました。
Responsible AI 議論と Youverse の交差点
以下のように、Youverseのアプローチはフォーラムで議論された課題に対応しています。
| Responsible AI の課題 | Youverse の解決策 |
|---|---|
| データ最小化 | 生体データは端末処理、VCは最小限の属性のみ提示 |
| 透明性 | VC検証は第三者が確認可能、ブラックボックス回避 |
| プライバシー保護 | ユーザー主権のDIDモデル |
| ディープフェイク対策 | AIによるLiveness判定 |
| 相互運用性の欠如 | プラットフォーム非依存の分散型ID基盤 |
この構造は、フォーラムで強調された
“透明性 × プライバシー × 実用性” を同時に成立させるモデル
として非常に高い評価を受けました。
また、このホテル業界での成功事例は、
生体認証 × VC × 分散型ID = Responsible AIを具現化する方式
として、医療・金融・教育などの高度な本人確認を必要とする領域にも適用可能であることを示しています。
特にEU域内では、eIDAS 2.0・European Digital Identity Wallet(EUDI Wallet)の展開を背景に、分散型ID×AI活用の組み合わせ
の社会実装需要が高まると考えられる。
まとめ
Youverseが描いた“責任あるAI”の実装モデル
Responsible AI Forum 2025を通じて見えたのは、
・透明性
・プライバシー保護
・データ最小化
・安全性
・相互運用性
という原則を満たしつつ、AI技術を実務で活かすための“実装モデル”が求められているという点。
Youverseのデモは、その答えとして
・AI生体認証
・VCによる改ざん不可の証明
・ユーザー主権に基づく分散型ID
を統合し、理念ではなく、動くプロダクトとしてResponsible AIを具現化した例となりました。
Responsible AI を“理念”から“実装”へ移す上で、今回のデモは参考となるアーキテクチャの要素を備えていたと評価できます。
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