Y Combinatorにも選出された「Authologic」について調べてみた

本記事では、ポーランドのスタートアップ「Authologic」社についてまとめていきます。

Authologic社は認証サービスを提供しており、Y Combinatorへの選出、12億円の資金調達など活発に活動している企業です。
「認証界のStripe」とも表現される彼らのサービスについて本記事では深ぼります。

そもそもStripeとは

未知のものを理解するときに「知っているもので例える」のは有用な方法です。

Stripeは時価総額10兆円を誇る、誰もが知る決済プラットフォーム界の巨人です。
オンライン決済を導入する際に、クレジットカードやコンビニ決済、更にサブスクリプション型課金や国際送金など、幅広い手段への対応がStripeという一つのサービスで完結します。

抽象化すると「ユーザー側の選択肢が複数ある中で、それらを束ねて一つのサービスで受け入れられる」仕組みを事業者に提供するビジネススキームです。

https://stripe.com/jp


Authologic社のサービスについて

Authologic社は、事業者が本人確認の仕組みを導入する際に「Authologic社のサービスを入れておけば、あらゆる認証手段に対応できる」サービスを提供しているようです。

決済手段が多様化し、ユーザーごとにPayPayや楽天ペイ、クレジットカード、現金、Suicaなど様々な支払い手段が選択されるのと同様に、
本人確認をする際にも、運転免許証とのツーショット、マイナンバーカードのスキャン(公的個人認証)、本人確認郵便などその手段は多様化しています。
(日本だとあまり選択肢がないですが、欧米ではeIDAS2.0やEUDIWといったプロジェクトのもと、各国で様々な本人確認方式が乱立する状況になっています。)

https://authologic.com/

↑本人確認の方式増え過ぎやろ、的な課題提示はAuthologic社のサービスページにもあり

Authologic社のサービスは、以下のような多様な本人確認に対応しているようです。

  • ウォレット型の本人確認(mDLやmdoc)
  • 銀行ID(金融機関のデータを基にした本人確認済みデジタルID)
  • NFCチップをベースとした本人確認(パスポートなど)
  • その他中央機関のデータベース情報を利用した本人確認

また単に「本人であるか」だけではなく、以下のような観点での分岐・チェック項目の追加も可能なようです。

  • 顧客の利用チャネル
  • 生体情報を利用した確認有無
  • AMLや反社チェックの観点で問題ないか

導入方式は、専用リンクの発行、API連携、SDKによる組み込み型などが用意されているようです。

Trinsic Connectに似ている

アメリカのTrinsicという会社が提供するサービスに似ていると感じました。

Trinsic社はアメリカのスタートアップで、累計890万ドルを調達しています。
彼らは元々デジタルIDウォレットやウォレットSDKを提供していたのですが、最近はビジネスをピボットさせて「Trinsic Connect」というサービスを提供しています。

このサービスは、外部プロバイダーが提供する本人確認サービスをバインディングし、事業者側は「Trinsicを導入しておけば、多様なユーザー&認証サービスに対応できる」することができます。
(当社が提供するproovyもこのエコシステムに入らないか、と営業がありました)

認証のチャネルや民間サービスが乱立する中で、事業者が効率よくすべてのチャネルに対応できるサービスをつくりたいという根底の思想はAuthologicとTrinsicで共通していると言えそうです。

まとめ・感想

需要有るんだろうな、というのが素直な感想です。

日々デジタルアイデンティティやDID/VC関連のグローバル動向を追いかけていますが、最近は行政・民間問わず日々新たなサービスを発表し、市場の過熱度合いは非常に高いです。
自社サービスにユーザー認証の仕組みを入れる上で、続々と登場するサービスや方式に各事業者がせっせと対応するのは難しいと思います。
そういった中で、Authologic社のようにそれらを一つのサービスでバインディングする仕組みは、事業者としても導入動機が明確だと感じます。

Trinsic社のサービスと比べても、NFC読込に対応していたり、多様な顧客チャネルやネガティブチェックにも対応できる分岐の導入など、
各事業者のニーズに細かく対応できる仕組みを整えている優位性があると感じます。

急成長する可能性が十分にあるので、当社としても継続的にウォッチしていきます。

おまけ

ブラウザ上で動くデモ(モック)があり、国を選択できるようになっていました。

ユーザーが居住する国で流通するデジタルIDや認証サービスが表示される仕様だと思いますが、日本はまだ未対応のようでした。(Yotiはイギリスの認証サービス)