「VCとはコンテナである」が言い得て妙なたとえだという話

自己主権型アイデンティティ(Self-Sovereign Identity, SSI)の分野で影響力を持つ人物として知られるティモシー・ラフ氏は、Verifiable Credentials(VCs, VC)について、「VCはコンテナのようなものだ」と述べました。この比喩は、VCの本質的な役割と特徴を簡潔かつ効果的に説明しています。

本記事では、この発言の真意を紐解きながら、VCが持つ重要な技術的意義を探っていきます。

https://identitybook.info/authors/timothy-ruff/ より

ティモシー・ラフ氏は、Digital Trust Venture Partners(DTVP)の共同創設者兼チーフストラテジーオフィサー(CSO)として活躍しているほか、EvernymやSovrinの設立に携わった、自己主権型アイデンティティの推進者でもあります。

解説

「VCはコンテナのようなもの」という表現は、VCがデータの保護と流通においてどのような役割を担っているかをわかりやすく説明しています。
VCは信頼できる発行者によって署名されたデータを安全に格納し、その完全性と発行者を確認できる仕組みを備えています。この技術は、デジタルIDや資格証明書の安全な管理・共有を可能にする、デジタル社会の基盤として重要な役割を果たします。

ただし、「完全性」とはVC自体が改ざんされていないことを示すものであり、その中に含まれる情報の正確性を保証するものではありません。たとえば、ある大学が誤って虚偽の合格証明書をVCとして発行した場合、そのVCは正当な署名が付与されているため完全性は保たれていますが、内容の正しさまでは保証されません。

要するに、VCは正確な情報そのものを保証する技術ではなく、情報が改ざんされていないことを保証する技術です。

この点を物流における「コンテナ」に例えたのがラフ氏の発言です。
コンテナは、貨物を安全に保護し、標準化された形で輸送するための仕組みですが、貨物の中身そのものの品質や正確性を保証するものではありません。コンテナの導入は物流の効率化をもたらし、コスト削減やサプライチェーンの迅速化に寄与しました。同様に、VCもデータの保護と流通を標準化し、デジタル世界における信頼のインフラを構築していますが、その内容の正確性には別途の確認が必要です。

コンテナも大発明だった(参照元Amazon

まとめ

ティモシー・ラフ氏の「VCはコンテナのようなもの」という比喩は、VC技術における重要な側面を強調しています。

VCは、安全で信頼できる形でデータを流通させるための標準化された枠組みであり、この特性はデジタル証明書の運用において極めて重要です。しかし、VC内のデータそのものの正確性を担保するには、別の監査や検証プロセスが不可欠です。(当社も発行者の正当性をより強固に確認できる仕組みづくり等を行っております。)