VC(Verifiable Credentials)が活用されている事例紹介

デジタルアイデンティティを管理する新たな技術として注目されるVC (Verifiable Credentials)技術 。日本ではまだ黎明期の技術ですが、海外では大型プロジェクトが複数展開されています。
この記事では、VCを活用した事例を3つご紹介します。

そもそもVCとは?という方はこちらをご覧ください。
【2024年最新】VC(Verifiable Credentials)とは

事例①:コロナワクチン接種証明書アプリ

事例一つ目は、日本国内で広く利用されたコロナワクチンの接種アプリです。

https://www.digital.go.jp/policies/vaccinecert

新型コロナワクチン接種証明書アプリとは

ワクチン接種を受けたユーザーがマイナンバーカードをスマホで読み取り、パスワードの入力を行うことで、デジタルワクチン接種証明書を発行することができるアプリです。
スマートフォン各種のアプリストアで入手することができました。

発行できる証明書の種類は2つで、国内用と国外用のワクチン接種証明書。この証明書はサービスを利用する際や海外渡航時にワクチン接種済みであることを証明することができました。

アプリの中で管理していたワクチン接種証明書は、smart health card(検証可能な資格情報)と呼ばれる国際規格のVCを用いていました。
VCの特性上、発行者(ワクチン接種証明書の発行元=医療機関、国)に問い合わせることなく、検証者(ワクチン接種証明書を確認したい人)が保持者(ワクチン接種証明書を提示する人)がワクチン接種を受けていることを検証することができたのです。

アプリの詳細な仕様

新型コロナワクチン接種証明書のQRコードはJWSで表現されています。
JWSからVCの形式や、署名部分を取得することが可能です。

署名部分をデジタル庁(発行者)が公開している公開鍵で検証することで、提示されたワクチン接種証明書が改竄されていないことや、真正性を検証することができます。

実際にQRコードから取得した JWSからワクチン接種証明書の検証を行っている記事がありましたので、参考までに添付します。

参考文献①:https://techmedia-think.hatenablog.com/entry/2022/03/13/150711
参考文献②:https://idmlab.eidentity.jp/2021/12/verifiable-credentials.html

事例②:farmer connect

farmer connectはスイスのスタートアップ企業です。

https://www.farmerconnect.com/

farmer connect社のプロダクトは、ブロックチェーン上にコーヒー豆やカカオの流通を記録し、サプライチェーンの透明性を高めるというものです。消費者はコーヒーがどこで生産され、どのように輸送され、加工されたのかを知ることができます。

コーヒーはアメリカで1日に4億杯も消費されるほど、ポピュラーな飲み物です。
https://www.ibm.com/blogs/solutions/jp-ja/iot-1850coffee/

Farmer Connectは、持続可能なコーヒー生産を促進するために、生産者や消費者に持続可能性に関する情報を提供することを目指しています。実際に、18歳から24歳のコーヒー消費者は割り増しでお金を払ってでも、持続可能な形で生産・流通するコーヒーを飲みたいと考えているという調査結果もあるようです。

参考文献③:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000087682.html
参考文献④:https://www.thankmyfarmer.com/about

VCの使われ方

生産者にデジタルアイデンティティを付与し、サプライチェーンデータを共有する際にVCが利用されます。取引記録や流通履歴などをVCで保存することで、新たな取引や売買時に真正性がとれているデータを提示することが可能となります

ブロックチェーンを利用しているので、スマートコントラクトによる人手の排除、トレーサビリティ性の担保も可能となり、サプライチェーン全体の透明性をより高めることができます。

事例③:ID.me

ID.meは提供しているデジタルIDウォレット(ウェブブラウザでも使える)を介して、ユーザーの属性情報(軍人、医療従事者、学生)を信頼性高く提携先サービスに提供している2B2Cサービスです。

①クレデンシャル情報の利活用

軍人、医療従事者、学生専用のクーポン発行機能を提供しています。ID.meが提供するウォレットに学生証や医療従事者であることを証明するVCを持っていると、ネットショップや店舗でクーポンがもらえます。

アディダスとかレイバンズのような有名ブランドでも利用可能です。学生や医療従事者向けの割引施策を打っている企業からすると、ID.meのユーザーがクーポンを認識してブランド強化につながるのは大きなメリットです。

実際に、ID.meの創業メンバーに元軍人がいて、割引を受ける際に紙の証明書を見せていたところから着想してこのサービスが始まったのだそうです。

②公的サービスへのログイン

Internal Revenue Service(アメリカの国税庁)などの公的サービスの利用時にもID.meは利用できます。様々な州の公的サービスでのログイン機能を有しています。

就職マッチングプラットフォームでのVC利用も可能なようで、職務経歴書などのVCを利用できます。

③サービス横断したシングルサインオン

複数のサービスを横断して利用できるログイン機能も有しています。ユーザーがどのサービスにどの情報を提供しているのか、一覧化できる機能も搭載されています。

まとめ

本記事ではVC(Verifiable Credentials)の活用事例をまとめました。数億人規模でユーザーを抱えた事例もあり、今後さらに普及していくポテンシャルを秘めた技術であることがお分かりになったのではないでしょうか。


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