Verifiable Credential Rendering Methods(VCの表示方法に関する標準)について その1
ニュース原文:
2025/10/30にVCを表現するための標準規格のドラフトの初版が公開されました。VCに関する標準が新たに出てきたなという話なのですが、VCをどのように表示するのかということを定義する初めての標準仕様であり、重要なステップの1つと捉えることもできます。そこで、本件にまつわるW3Cの仕様書ではどのようなことが記載されているのかを解説したいと思います。
目的について
仕様書のIntroductionに当たる部分ですが、例えば従業員向けのクレデンシャルを発行する発行者がいたとして以下のようなニーズが考えられます。
- 視覚的には会社のロゴを表示したい
- 視覚障がい者に対しては音声読み上げを付けたい
現行ですと、上記のような対応は各ウォレットやアプリが個別に実装するといったものになっています。これらをVCの内部で共通的に指定するための仕組みを定義しようというのが今回取り上げているドラフトが目的としていることになっています。
視覚障がい者のような、誰もがクレデンシャルの情報を認識できるというアクセシビリティという観点で標準化を進めるというのは非常に大切な観点であり、さすがですね。
データモデルの構成について
VCの表現方法をVC内部で定義するとなると、VCのデータモデルに何かしらの変更が加わるということになります。仕様書では以下のようなサンプルのVCが表現されています。
{
"@context": [
"https://www.w3.org/ns/credentials/v2",
"https://www.w3.org/ns/credentials/examples/v2",
"https://w3id.org/vc/render-method/v1"
],
"id": "http://example.edu/credentials/3732",
"type": ["VerifiableCredential", "UniversityDegreeCredential"],
"issuer": "https://example.edu/issuers/14",
"validFrom": "2010-01-01T19:23:24Z",
"credentialSubject": {
"id": "did:example:ebfeb1f712ebc6f1c276e12ec21",
"degree": {
"type": "BachelorDegree",
"name": "Bachelor of Science and Arts"
}
},
"renderMethod": {
"type": "TemplateRenderMethod",
"renderSuite": "svg-mustache",
"template": {
"id": "https://example.edu/credential-templates/BachelorDegree",
"mediaType": "image/svg+xml",
"digestMultibase": "zQmerWC85Wg6wFl9znFCwYxApG270iEu5h6JqWAPdhyxz2dR",
"renderProperty": [
"/issuer", "/validFrom", "/credentialSubject/degree/name"
]
}
}
}
VC内部で表示方法を定義するためのプロパティがrenderMethodプロパティと呼ばれるものです。こちらのプロパティの中でさらにどんなプロパティを定義するかが表現されています。
2つのrenderMethodの表現方法
上述の例にあったように、renderMethodプロパティではtypeというプロパティが存在します。このtypeにどの値が入っているかによって、VCの表現方式が異なるという整理がされているようです。実際に入る値は以下です。
- TemplateRenderMethod
- OpenAttestationEmbeddedRenderer
TemplateRenderMethodはテンプレートベースの静的なレンダリング方法となっており、SVGやPDFのような既定のテンプレートを使って表現する方法です。API経由でデータを取得したり、VCの中にデータを埋め込む方法が提示されています。

OpenAttestationEmbeddedRendererはインタラクティブなHTMLによる表現方式になっています。こちらの手法を使うと、動的にコンテンツをレンダリングするようなことができるみたいです。仕様書の例として以下のサイトが紹介されているのですが、執筆時点ではサイトが落ちていました。アクセスできないわけではないのでどこかで復旧できるかもしれません。
それぞれのtypeでどのような実装ができるのか
ここまでで、VC内部で表示方法をしていすることができ、その中でも2通りの方法で指定することができるという風に紹介しました。次に、この2つの方法でどのようなデータモデルでVCを発行することが考えられ、どのようなユーザー体験、ウォレットの実装となりうるのかを解説したいと思います。
・・・が、少し長くなり過ぎたので、次回の記事でご紹介します!
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