その「鶏と卵」、Web3技術で解けますか?

オンライン商談で、Web3技術を活用した新規事業提案が行われている。

「貴社がもたれる〇〇データをオンチェーン上に記録し、他のオンチェーンデータと絡めることで高度なパーソナライゼーションが可能となります。さらにスマートコントラクトを用いて自動化も可能です。」

提案された側が遠慮がちに切りだす。 「構想は面白いのですが、現状オンチェーンにそのような有益なデータは載っているのでしょうか。いわゆる『鶏と卵』の問題だとは思うのですが・・・」

──────この問いをきっかけに議論が停滞してしまうケースは、実はあまり珍しくない。

Hello ニワタマ

「鶏と卵」
これはプラットフォームビジネスを立ち上げる際に必ず直面する課題だ。

念のため解説すると、プラットフォームビジネスとは「価値交換や経済活動を行う場を提供し、複数の立場の関係者を呼び込む」ビジネスモデルを指す。例えばAirbnbであれば「家を貸したい人」と「借りたい人」、SNSであれば「情報を発信したい人」と「情報を収集したい人」をつなぐ場を提供する。
片側がいないともう片側も集まらないため「ゼロからどう起ち上げるのか」が問題となる。(コールドスタート問題とも)

当然この問題はWeb3の登場によって生まれた新しい課題ではない。 むしろプラットフォームビジネスが市場を席巻したこの10年で、そのポテンシャルやノウハウ、そして「苦労の末に編み出された解決方式」は既に市場に十分蓄積され定説化すらしている。

▼参考となる書籍も多数存在する

https://www.amazon.co.jp/dp/4296001256?ref=ppx_yo2ov_dt_b_fed_asin_title
https://www.amazon.co.jp/dp/4478100039?ref=ppx_yo2ov_dt_b_fed_asin_title

話をはじめのシーンに戻そう。 〇〇データを記録し、他サービスが生み出した類似のデータも載ってきてそれをユーザーに紐づけることでパーソナライズを進めて・・・まさにプラットフォーム型のビジネスを提案しようとしている。
そんな中で「鶏と卵の問題」が出てきて提案が停滞するのは非常にもったいない。

提案されているものがプラットフォーム型のビジネスである以上、「このような形で鶏と卵の問題を解決できないか」というGo-to-Market論こそ真っ先に議論されるべきだ。

「オンチェーン」「スマートコントラクト」といった技術的な響きがビジネス課題を魔法のように解決してくれる訳ではないのだから。

示唆

本記事で扱った内容も、実はこれまでのコラムで取り上げた内容と根幹ではつながっている。それは「違うものを明確に分ける」ということだ。

第一回のコラムでは「エコノミーと技術は分ける」、第二回のコラムでは「標準仕様と強みは分ける」ということを書いた。その流れで行くと本記事の内容は「事業戦略と技術は分ける」と抽象化できるであろう。

Web3やブロックチェーンがもたらすイノベーションの本質は「できないことが明確であること」だと説く言説もある。
Web3ならではの課題・価値と、一般的な事業開発(システム開発)でも重要なそれを分けることが、議論を建設的に進めるうえで大切ではなかろうか。