Web3はどこに向かうのか

Web3と呼ばれる世界があります。
分散型技術をベースとした次世代インターネット世界です。

本記事では、Web3が最も盛り上がっていた時期にこの領域に入り、大企業の担当者、ベンチャー起業家という両面から本領域に携わってきた著者が

  • Web3の面白さ
  • 普及に向けた壁
  • 今後に関しての予想

を書いていきます。

Web3の面白さ

私がWeb3に興味を持ったきっかけ、実際に何千時間と関わってきた中で感じる面白さです。

アプローチがダイナミック

Web3の元祖であるビットコイン誕生の背景には「国が通貨を発行しコントロールする社会の変革」という思想があると言われています。
このダイナミックな思想を実現するためにブロックチェーンをはじめとする革新的なソリューションを生み出し、現実にしてしまった創始者(サトシ=ナカモト)がすごすぎます。

GAFAをはじめとするメガ企業がデジタル世界を牛耳る状況へのアンチテーゼとしてWeb3が盛り上がっているシーンも多いです。

世間の荒波に揉まれる中で、妥協的に現実的な解決案を生み出すことで精一杯になる人がほとんどではないでしょうか。
これまでの当たり前にとらわれず、社会をダイナミックに変えようとするチャレンジの結晶がWeb3だと感じます。

対症療法ではなく原因療法

社会や日常にペインを発見した際、そのプロセスを洗い出しボトルネックとなる箇所を特定、そこにソリューションを持ち込むのが一般的なアプローチだと思います。

「アプローチがダイナミック」とも関連しますが、Web3は既存の枠組みや仕組みそのものを疑い変えていく動きが強いです。

例えばシステム運用につきものの人件費やヒューマンエラーに着眼し、そもそも人手を介さずに契約が履行されるプラットフォームを作ってしまう。(よりよい業務プロセスの提案や整理されたUI開発ではなく)

自分以外の誰かのミスや悪意によって不利益を被ることに違和感を感じたら、そもそも自分以外の誰も信じなくてもいい世界を実現する。
(事前の取り決めや責任分界点を明確にする、保険の仕組みを使うのではなく)

課題が雑草のように生えてきてそれを抜いていくのではなく、そもそも新しい土地を用意して全く違う植物を植える。
そんなイメージです。だいぶ微妙なたとえ

課題解決型ではなく新価値想像型

新サービスを売り出すとき「これまでかかっていたコストをこれだけ削減します」と言うのは一番のセールストークです。

導入する個人や企業としても、
削減できる費用>そのサービスを導入する費用
が成り立てば経済合理性をもって導入に踏み切れるからです。

Web3は全く新しい世界観・経済圏で構成されており、そこで新たな価値を創造することに各プレイヤーが挑戦しています。

Web3普及に向けた壁

ここまでWeb3の面白さを書いてきましたが、正直多くの人にとってWeb3は未知の存在で、Web3でガンガン稼いでいる企業はほとんどいないのが現状です。
ここからはWeb3が普及しづらい理由、大企業とWeb3の相性が良くない背景を書いていきます。

インフラレイヤーの技術である

Web3はアプリケーションレイヤーが独立して動くわけではなく、その基盤となるインフラレイヤーもセットで導入する必要があります。

例えばAIのソリューションであれば今使っているデバイスから簡単にサービスにアクセスして動かすことが出来ます。Web3では従来のデータベースをブロックチェーンに移行したり、ユーザーにウォレットを使わせたりと改修の範囲がどうしても大きくなってしまいます。

インフラレイヤーに手を入れるのは特に大手企業では並大抵のことではないため、それ故に本格導入が難しく実証実験が関の山となってしまいます。

鶏と卵に陥りがち

ブロックチェーンや各種トークンアセットは多くのユーザーが保有・利用し、大量のデータが載っていることでその真価を発揮します。

ただ最初ゼロのインフラに対して誰がデータを載せるのか、データが少ない時期においてユーザーに使いたいと思ってもらえるほどのメリットを提供できるか、といった問題が付きまといます。

Web3における鶏と卵の話は過去にnoteにて説明しています↓
https://note.com/recept_oshima/n/n19abea5e071d

規制動向に振り回される

トークンは金融資産や有価証券などとして扱われる都合上、規制や法律にガチガチに縛られています。

無法地帯にしてしまうとマネロンや詐欺の温床になってしまうので致し方ない側面もありますが、規制業界になってしまうのは成長速度が鈍化したりイノベーションが止まってしまうことにつながります。

玉石混合なカオスな領域

Web3界隈には怪しい企業や個人がたくさんいます。これは暗号資産という不安定な価値媒体が出回る経済圏であること、ボーダレスで海外との接触が容易である点が要因として挙げられます。さらに私的には「非エンジニアでも頑張れる領域」という点も要因としてあると思います。(私もそうですが)

サービスを提供したり情報を発信する立場になるうえでの参入障壁が低いため、「目立つ人が勝つ(プロダクトや技術の質ではなく)」状況になり得るんじゃないかと。

特に一昔前はあらゆる人が色んなことをしている界隈でした。この状況は大企業としては事業展開するリスクが高い領域として映りますし、内輪ノリがひどい領域になってしまう側面も否めません。

結論、Web3はまだ輝ける

Web3は社会を変える大きなポテンシャルを秘めていると思います。
そこに対する考え方は昔から変わっていません。

カオスな領域ということを書きましたが、最近は冬の時代も超えて地に足をつけて頑張ってきた企業が残っている印象。

分散型技術の文脈で語られる「理想の社会」と「実際の社会」とには大きな乖離があるため、現実社会で広く受け入れられるバリューがどこにあるのか冷静に分析し、原理主義に陥らずにWeb2世界における技術と考え方とのハイブリットなサービスを作る必要があると考えています。

私も過去にWeb3に魅了されたものとして、Receptという会社で上記アプローチに取り組んでいる最中です。