デジタルアイデンティティ業界のM&A事情

ニュース原文:

Biometrics and digital identity M&A in 2024 | Biometric Update

It is an obvious time to reflect on what 2024 has meant from an M&A and investment perspective for the biometrics and identity industries.

2024年はデジタルアイデンティティ業界において、企業がポートフォリオを強化するための買収が相次ぎました。

本記事では、主要な買収事例を振り返り、その背景や影響を整理してみました。

アマデウスによるVision-Boxの買収(2024年4月)

  • 買収された会社の事業内容
    Vision-Boxは、空港、航空会社、国境管理向けのバイオメトリクスソリューションを提供するリーディング企業です。
    顔認証技術を活用した搭乗手続きの効率化や、国境管理のセキュリティ強化を目的としたソリューションを専門としています。
  • なぜ買収されたのか
    アマデウスは、旅行業界向けのソリューションを幅広く提供しており、Vision-Boxを取り入れることで、エンドツーエンドの旅行体験を実現するための技術を強化しました。
    旅行者が一貫してシームレスに移動できるプラットフォームの構築が買収の大きな理由となっています。
  • 買収後の展望
    Vision-Boxの技術は、アマデウスの既存の旅行プラットフォームに統合され、より効率的で安全な旅行体験の提供に貢献しています。

https://corporate.amadeus.com/en/newsroom/vision-box-biometrics-acquisition-complete

EntrustによるOnfidoの買収(2024年)

  • 買収された会社の事業内容
    Onfidoは、AIを活用したアイデンティティ検証およびドキュメント認証を専門とする企業で、Airside Mobile(2023年に買収)を通じて旅行者向けのデジタルアイデンティティソリューションも展開していました。
  • なぜ買収されたのか
    Entrustは、北米を中心にセキュリティ技術を提供しており、旅行業界でのデジタルアイデンティティ需要を取り込むために、OnfidoのAI駆動の検証技術を獲得しました。
    顧客オンボーディングプロセスのデジタル化にユースケースを想定しています。
  • 買収後の展望
    EntrustはOnfidoの技術を活用し、旅行や政府関連市場への進出を目指しています。

https://www.entrust.com/company/newsroom/entrust-completes-acquisition-of-onfido-creating-a-new-era-of-identity-centric-security

IN GroupeによるMitIDの買収(2024年11月)

  • 買収された会社の事業内容
    MitIDはデンマークでデジタルアイデンティティサービスを展開し、個人認証や電子署名、セキュアなデジタルアクセスを提供していました。
    デンマーク国内で高い信頼性を持つ企業です。
  • なぜ買収されたのか
    EUが推進するデジタルアイデンティティイニシアチブやeIDAS 2の実現に向けた準備として、MitIDの専門知識や技術を他の事業部門へ転用する狙いがありました。
    IN Groupeはこの買収により、ヨーロッパ市場での存在感を強化、また他事業への転用を考えているようです。
  • 買収後の展望
    MitIDのノウハウはIN Groupeに活用され、EUデジタルアイデンティティウォレットやeIDAS 2プロジェクトへの貢献が期待されています。

https://ingroupe.com/news/ingroupe-and-nexi-acquisition/

Toppan GravityによるHID Citizen Identity部門の買収(2024年10月)

  • 買収された会社の事業内容
    HID Citizen Identity部門は、政府向けの物理的アイデンティティドキュメント(パスポートやIDカード)の発行および管理を専門としています。
    元々はイギリスのDe La Rueが運営していた事業で、2019年にHIDが買収しました。
  • なぜ買収されたのか
    凸版が印刷業を祖業としていることは言わずもがな。
    本買収によって、政府系ID市場での競争力を強化し、デジタルアイデンティティソリューションへの移行を支援する目的があります。
  • 買収後の展望
    Toppan Gravityは、この買収を通じて、政府向けのアイデンティティソリューション全体の提供能力を強化し、デジタル化の波に対応する体制を整えています。

https://www.holdings.toppan.com/ja/news/2024/10/newsrelease241025_1.html

2025年の展望

2025年には、さらなるM&A活動が進むと同時に、業界全体で投資が活発化すると予想されています。特に、バイオメトリクスとデジタルウォレットの統合、そしてVerifiable Credentials(VCs)分野での成長が期待されています。EUのデジタルアイデンティティウォレットに関連する進展が、世界市場に大きな影響を与えるでしょう。

業界がさらなる進化を遂げる中で、弊社Receptも、このDID/VCメディアを盛り上げることができればと思います!


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